早稲田大学 先進理工学部
物理学科・応用物理学科
寄田研究室(素粒子物理学)
私が所属する寄田研究室では、欧州原子核研究機構 (CERN) という、スイスにある世界最大規模の素粒子物理学に関する研究所の ATLAS (粒子加速器) 実験に参加し、2012年に存在が確認されたヒッグス粒子の詳細の解明や、未知の粒子の探索などのため日々研究を進めています。
研究では、高エネルギー状態の陽子と陽子を衝突させた後の粒子の飛跡を再構成することで粒子の特徴などを調べるのですが、ATLAS で取得するデータ量は膨大です。また、今後計画されている加速器や検出器のアップデートにより更にデータ量が増える見込みで、飛跡再構成の計算のために必要な、計算資源や計算時間の削減といった課題を抱えています。その課題解決の一助とするため、量子コンピュータ・イジングマシンの活用を検討している中で、ウェブサイトでの紹介やドキュメントが非常に充実している Fixstars Amplify を活用することにしました。
今回の研究では、飛跡再構成を QUBO 形式の組合せ最適化問題として捉え、Fixstars Amplify AE を用いて計算したのですが、非常に短いアニーリング時間にもかかわらず、一定の精度の解を求められることが確認できました。QUBO 行列の作成に使っている関数のパラメーター調整などによる精度向上や、データが増えた場合でも同様の精度で解を求められるかなど、更なる検討課題はありますが、この成果は重要な一歩になったと思います。
Fixstars Amplify は、ウェブサイトのドキュメントや技術リソースなどの情報が豊富で、修士課程から Python を始めた私でも使いこなせるようになりました。また、研究においては複数のマシンを比較検討していきたいと思っているのですが、Fixstars Amplify はマシンの切り替えが簡単なので、その点でも有用だと思っています。今後も Fixstars Amplify を通じた他社マシンへのアクセスの良さなどを更に強化してくれればと期待しています。
*本記事の掲載内容は全て取材時(2023年3月)の情報に基づいています
参考資料
論文名
Amplifyで求めた飛跡再構成の結果