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アニーリングマシンを用いた
合金触媒の探索・解析支援ツールの開発

プロジェクトメンバー

早稲田大学 先進理工学研究科 応用化学専攻
三瓶大志 様
七種紘規 様

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取り組んだ内容

化学反応を促進する材料である触媒の開発は、カーボンニュートラルの実現に向けて重要な研究テーマの一つです。近年では、多元素で構成される触媒の検討が盛んに行われていますが、元素配置の組み合わせが非常に多くなるため、それぞれの元素の配置を明らかにすることは極めて困難です。本プロジェクトでは、複数の金属元素からなる材料である合金を対象として、そのモデル中の金属の配置をアニーリングマシンにより求めるコードの実装を行いました。さらに、出力された合金構造やその構造的な情報を可視化するコードも実装しました。

組合せ最適化問題の概要

結晶構造中の金属配置の最適化の問題です。ユーザーが指定した金属の比率となるように結晶構造中に金属種を割り当てます。この際に、合金が最も安定となるようにエネルギーが小さくなる配置を求めます。

決定変数

金属の種類×合金中の金属位置の2次元の決定変数(その種類の金属が存在する場合は1、しない場合は0)

決定変数のイメージ

金属の種類
金属a 金属b ・・・
金属配置 0 q (0 or 1) q (0 or 1)
1 q (0 or 1) q (0 or 1)
2 q (0 or 1) q (0 or 1)
目的関数

金属配置のエネルギーの最小化(最安定な金属配置の探索)

制約条件
  • 金属の種類がユーザーが指定する組成に一致する
  • 1つの金属位置に1つだけ金属種が割り当てられる
苦労した点

目的関数を作成する際に、結晶構造内の金属や金属ペアの配置がエネルギーに与える影響を、QUBOやHUBOの係数として数値化しました。合金の結晶構造の対称性を考慮することで計算量を大幅に減らすことができますが、数値化した各係数を、対称性を持つ金属ペアの配置に対応する位置すべてに代入する必要があります。その際の同じ対称性を持つ金属ペアのリストの羅列や、QUBOやHUBOへの変換部分の実装にはとても苦労しました。

今後の展望

今回、アニーリングマシンによる合金触媒の最安定な金属配置の探索と、最適化された配置における安定性や物理化学情報を可視化できるプログラムを開発しましたが、今後更なる検討や改良を加えて、将来的には触媒化学の研究者に使ってもらいやすいようにオープンソースソフトウェアとして公開することを検討しています。研究者の触媒開発における触媒構造の理解を支援するツールの提供を通して、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた高性能な触媒の開発に貢献していきたいと思っています。

嬉しかった点

取り組みを始める前にはどのような目的関数を構築すべきかも不明瞭でしたが、プロジェクトマネージャーや他のチームの方々からの助言や参考文献を参考にしながら、目的関数を定式化できた時はとても達成感がありました。また、アニーリングマシンが扱える問題サイズなどを、ある程度感覚的に理解できるようになったことは今後にも繋がると感じました。

見ている方に一言

未踏ターゲット事業を通して、他のチームが取り組むテーマなどから、世の中の多様な課題が組合せ最適化問題として捉えられることを実感し、大変興味深く感じました。今後も、想像もしなかった分野や領域での問題が組合せ最適化問題として定義され、解決されていく様子を見ることを楽しみにしています。

*本記事の掲載内容は全て取材時の情報に基づいています

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